平将明です。
コンサートチケットなどを買い占め、高額で転売するチケット転売問題。4月21日に開催された「ライブ・エンタテインメント議員連盟」の報告会では、音楽関係者が集まり、その実態とともに法規制や運用について議論が展開されました。どのような対策が必要なのでしょうか。
市場の生態系を壊す悪質なチケット高額転売
チケット転売市場の規模はおよそ600億円と見られ、年々拡大傾向にありますが、コンサートチケットを例にすると、元値の何倍もの値段で転売サイトに出品されていることがあります。しかも、大量に。
そういった出品者の評価を見てみると、100件以上のやり取りをしている常習者。つまり”業者”であって、「行こうと思っていたが行けなくなってしまった」という方ではないことがすぐにわかります。
本来、コンテンツ提供側はファンに対して適正な価格を設定しているものです。しかし、業者は大量の買い占めによって市場に出回る数を少なくし、不当に価格を釣り上げて転売するといった、市場の生態系を壊す行為を続けています。
ネットを経由しない転売行為、いわゆるダフ屋に対しては迷惑防止条例が適用され、規制をかけることができるのですが、ネット上のダフ屋行為には法的な規制がありません。コンサートチケットだけでなく、スポーツ観戦や舞台をはじめ広範囲にリスクが蔓延していますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのチケットも標的になる恐れがあります。
そんななか、アーティストが新聞に広告を打ち出したり、プロモーターとの共同声明を出したりと精力的な活動を行い、業界全体が同じ方向を見て動き始めました。
業者の手口であるbotを規制
“ローメーカー(法律をつくる人)”である私たち議員にできることは”規制”と”運用の厳格化”ですが、問題はどこに焦点を当てるかということ。マッチングサイトやプラットフォーマーそのものが悪だとして管理・監督してしまうと、シェアリングエコノミーの成長を委縮させてしまう可能性があります。
また、個人間で納得のいく価格帯でやり取りをするケースもありますから、”コンサートに興味のない人間が大量に買い占め、高額で転売し利ザヤを稼ぐ”という行為そのものが問題であると捉え、チケットの買い占めに利用される「bot(ボット。自動で作業を行うコンピュータプログラム)」自体を規制し、大量購入のルートを抑えることが有効だと私は考えています。
昨年、アメリカではオバマ元大統領がチケット転売禁止法(BOTSアクト)に署名し、botによるチケットの大量購入は罰金刑を科すというルールを敷きました。
このように、高額転売業者の手口であるbotを規制した上で、さらに転売チケットによる入場を厳格化するために、本人確認の仕組みを作っていく。例えば、マイナンバーカードは有効だと思いますし、将来的にはカードに埋め込まれているICチップに生体認証のデータを入れて本人確認を厳格化したり、チケットの完全電子化によってデータ上で登録情報の管理を行うなどが考えられます。
盛り上がる業界の火を絶やさないために
(一社)日本音楽事業者協会、(一社)日本音楽制作者連盟、(一社)コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の業界4団体による、健全な2次流通を目的とした業界初の公式チケットトレードリセール「チケトレ」 が5月10日からサービスを開始しています。
ポイントは”利便性”と”ユーザー搾取の禁止”。転売目的の大量出品ができないよう規制し、公的身分証の画像登録を伴う厳密な個人認証を行った上で、すべて券面金額で出品されています。
また、万が一、偽造チケットや出品者都合による理由で公演に入場できなかった場合は、チケット代金や取引にかかわるすべての手数料を返金するといったサポート体制を整えています。こちらは委託先のぴあ(株)が運営していくことになります。
今回は、コンテンツ提供側とファンの関係性を守るために、業界全体が足並みを揃えて問題提起したことに意味があります。
2016年度の国内コンサートの公演回数は29,862回(平成29年3月29日発行:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会調べ)と過去最高の数字。当然、市場が盛り上がることでチケット転売の標的が増えてしまうわけですから、早急にbot規制や本人確認の厳格化を詰めて、高額転売防止を総合的に進めていきます。
※ 「政経電論」から転載 https://seikeidenron.jp/statesman/20170525_column_taira.html
生年月日:昭和42年2月21日
当選回数:4回
学歴:1989年3月 早稲田大学法学部卒業
得意な政策分野:成長戦略、中小企業政策、行政改革、クールジャパン政策、規制改革
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