八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(H29.6.9)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.814」をご紹介します。
【「時々刻々 No.814」 「世界で最もハードルの高い」憲法改正】
今井磯一郎氏を知っていますか。
憲法記念日に先立つ4月26日、憲政記念館で日本国憲法施行70周年記念式典が開催された。同時に同館で行われたのが「日本国憲法施行70周年記念展示」。陛下御璽、吉田茂総理大臣などが署名された、日本国憲法御署名原本(複製)や憲法改正案委員会速記録原本などが並んだ。憲法の施行は昭和22年5月3日。小生の人生と共に歩んできたと思うと感慨深い。
展示室の最後のコーナーに、第一回衆議院選挙(明治23年)で当選した300名の写真一覧があった。その中に愛知県第9区、今井磯一郎氏が載っていた。初めて目にする人であったが、直感的に故郷の人かもしれないと思い、国会図書館に調査依頼した。併せて故郷の識者に電話で尋ねると、「名前は聞いたことがある。子孫は名古屋にいるようだが、お墓は俺のうちと同じところにある。縁者に聞いてみる」と言われた。後日両者から資料が届いた。
今井磯一郎。天保12年(1841 年)加茂郡仁王村(豊田市坂上町)に生まれ、明治3年平井村百々(豊田市百々町)今井家の婿養子となる。明治12年に38歳で平井村戸長、翌13年に愛知県会議員、23年に49歳で第1回衆議院議員選挙に出馬し、以後4期8年間に渡って活躍した。写真では面長で禿げ上がり口に立派なひげを蓄えている。「その風貌がドイツのビスマルクに酷似していたことから、院の内外において東洋のビスマルクあるいは今ビスと呼ばれ、威風堂々たるものであった」と記されている。過日お墓に案内してもらった。戒名「瓊雲院騰譽永仙有訓居士、明治四二年九月十日去」と刻まれている。68歳の生涯であった。勉強不足で申し訳なかったが、我が故郷の誇りである。
さて、憲法改正の議論が本格的に動き始めた。安倍晋三首相は昨年の通常国会、臨時国会、そして今回の通常国会の所信演説でもその必要性を訴えてきた。「憲法施行70年の節目にあたり、次なる70年に向かって、どのような国にしていくのか。憲法審査会で具体的な議論を深めようではないか」と今回も述べている。憲法審査会での進展が、首相の思いとかけ離れているのか、業を煮やしてか、自民党総裁としてインタビューに答えている。その内容は「憲法改正を2020 年に施行する。現憲法9条1項、2項をそのまま残し、自衛隊の存在を明記する。教育は極めて重要なテーマで無償化を図る」というものだ。
唐突感は否めないが、2020 年東京オリ・パラを機会に日本が新しく生まれ変わるきっかけにしたいという強い思いは理解できる。発議に必要な衆・参3分の2以上の議席があるうちでなければできないことも背景にある。
当然、憲法改正は国民投票で過半数を得なければならない。「世界で最も改正のハードルが高い」と指摘されている。自民党は憲法改正推進本部の組織を強化し、改憲案の年内まとめを目指す。総裁の意向も尊重しなければならないが、同本部が平成24年にまとめた憲法改正草案をベースに議論すべきだ。
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:2回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生