石破茂会長石破 茂 です。

国会会期末となり、野党は内閣不信任案や閣僚の問責決議案の提出などにより深夜早朝まで最後の抵抗を試みましたが、国民の共感は広がることなく、政府・与党のペースで事は進み、本日で事実上会期を閉じることとなりました。

国家戦略特区の意義を国民にご理解いただくためにも、「政府・与党は国会を早期に閉じて逃げ切りを図ろうとしている」と言われないよう、更なる努力が必要です。

しかし一方、このような状況の中で何故野党への支持が全く広がらないのかについて、野党諸氏は猛省すべきです。野党が党内抗争などやっている場合ではありませんし、委員会の質問も、論点を拡散させることなく緻密に行わなければ何の成果も挙げられません。政権担当能力のある健全な野党が存在し、政権交代の可能性が確保されることが政党政治においては必要なのであり、これが無ければ政治に緊張感など生まれません。

ところで、獣医学部の新設を認めず、獣医の需給を市場原理に委ねないのは、医師や薬剤師と同様、その養成に(結果的、間接的に)多額の公費が投入されており、資格を有している者が過剰となって、その資格を生かした職に就けない状況が生じれば納税者の利益に反する、という理由もあるのではないか、と先日ある方から指摘を受け、一理あると思ったことでした。

今週開催された自民党憲法改正推進本部において、保岡興治本部長が「憲法改正に当たって現行の憲法解釈は1ミリたりとも動かさない」旨発言されました。

今から四半世紀以上前の政治改革運動の頃より、保岡本部長の政治に対する真摯な姿勢には変わらない畏敬の念を抱いています。しかしながらこのご発言については、それが現下の我が国が置かれている激変する安全保障環境にいかなる影響を与えるのかなどを明確にして頂かなくてはならないのではないかと思いました。

安倍総裁は5月3日に発したメッセージで「憲法第9条第1項第2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方が国民的な議論に値する」と述べられただけのはずです。

14日水曜日、日本外国特派員協会における講演後の質疑応答で、「憲法改正より、経済政策や社会保障政策など、優先する課題があるのではないか」との質問がありました。限られた期間内に政治が注げるエネルギーには自ずから限界があるのであって、その優先順位を定めることもまた政権党の重要な責務です。

もしも「現状追認型・戦後体制固定型の加憲的憲法改正」に過ぎないのであるならば、その優先順位はそれほど高いと私には思われません。それはまた、論理整合性に無理があるのみならず、今後の防衛政策の展開に対するリスクも相当に高いと言わざるを得ません。

「優先順位」といえば、産経新聞論説委員である河合雅司氏の最新刊「未来の年表 人口減少日本でこれから起こること」(講談社現代新書)は是非お読みいただきたい好著です。

2020年には女性の半数が50歳を超え、2024年には全国民の3人に1人が65歳以上になり、2027年には輸血用血液が不足し、2033年には3戸に1戸が空き家になる…というのは、このままいけば間もなく確実に我が国に起こる事態であって、このことを直視し、解決策を提示しなくてはなりません。お時間の無い方は、同書末尾の「日本を救う10の処方箋」だけでもお読みくださいませ。

河合編集委員はこの中で、
「少子化は国家を根底から揺るがす『静かなる有事』だ。その対策は『国家の固い決意』のもとに行うものであり、それがゆえに税財源で取り組むのが王道である。政府はすべての国の事業に優先して予算を確保し、財源が足りなければ無駄な支出を削減したり、国の別の事業を縮小したりしてでも行うべきだ」
「歴代政権は財源不足を理由に中途半端な対策を繰り返してきた。いつ実現するかわからない消費税増税を当て込み、『消費税率が上がらないからできない』と、やらないための言い訳材料のように語り、国債発行や保険料の上乗せという姑息な手段によって財源確保を図ろうとしている」(以上同書192ページ~193ページ)
とした上で、「社会保障循環制度」を提案しておられます。この制度についてはまだ十分に理解、咀嚼できておりませんので、更に研究したいと思っています。

11日日曜日の高知県土佐町における集落活動センター「いしはらの里」見学、その後の高知県集落支援センター連絡協議会での講演は、私にとりましても多くの示唆を受けた貴重な体験となりました。

「この集落はどんなに頑張っても残らないかもしれない。しかし何もしないままでいいのか。小さな集落が守れないで、何故国を守ることができるのか」との地域住民の方の言葉には、心からの感動を覚えた次第です。

「やりっぱなしの行政、頼りっぱなしの民間、全然無関心の市民」(秋田市在住の漫画家・こばやしたけしさんの言葉)が三位一体となれば地方創生は必ず失敗するのですが、高知県各地における取組は、これと全く逆の発想と手法からなる果敢な挑戦です。

尾崎正直知事の先見性とリーダーシップ、これに共鳴し、実行する県議・職員や市町村長・議員・職員各位、そして各集落の皆様に深く敬意を表します。

週末は、17日土曜日が内藤兵衛兵庫県会議員県政報告会で講演(午後2時半・西脇ロイヤルホテル・兵庫県西脇市西脇)、北浜みどり兵庫県会議員後援会で講演(午後5時・ANAクラウンプラザホテル・兵庫県神戸市中央区北野町)、兵庫県知事選挙井戸敬三候補応援集会で挨拶(午後7時・兵庫県民会館・神戸市中央区下山手通)という日程です。

18日日曜日は、体調管理、まだ目を通していない文献の読了、書類整理などに充てたいと思います。

週半ばには涼しい日もありましたが、木曜日からは暑さの戻った都心でした。

皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。  

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:10回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生