石破 茂 です。
参議院の選挙制度改革を巡っては、なお異論が燻っているようですが、他にどのような方法があるのかを示さないままに「場当たり、党利党略、お手盛り」と批判だけしている報道や発言者を見ていると、無責任な、心情の冷たい人たちがいかに多いことかを思い知らされます。
人口減少県など日本に要らないのだ、とまで言い切る人までいる様(さま)を見ると、人間ここまで冷酷に割り切れるものなのかと空恐ろしい気も致しますが、本当にそう思うのなら正々堂々と自らの名を名乗って、合区対象県の地元紙に投稿するなり、当該県において拡声器を持って演説でもしてみればよいのです。それもせず、そもそもそんな気もないのに、匿名で自説を展開し、悦に入っているような人がいることに対しては、その無責任さ、卑劣さに対する嫌悪感を抱くとともに、日本社会の一部に広がりつつある深刻な病理を感じずにはいられません。
本来、一票の格差は2倍以内であるべきと思っておりますが、そのためには「国会議員は憲法・外交・防衛・財政などの国政の基本にのみに専念し、地方の利益実現には関与しない」という体制を可能にする抜本的な地方分権が必要であり、これは四半世紀も前の平成5年、細川政権下の政治改革特別委員会で指摘したことなのですが、細川総理も山花政治改革担当大臣も何ら反応を示さず、その後、確たる進展もみておりません。
地方分権が徹底せず、国会議員が国益にも資する地方の利益を実現する役割を負う以上、定数の削減は発言力の低下をもたらし、東京一極集中に更に拍車がかかることにもつながります。一方で、なかなか議論が盛り上がらない責任の多くが我々にあることは十分に承知しております。
衆議院(2倍以内)に比べて較差が3倍以内と大きい参議院の在り方も見直さなくてはならないのであり、衆議院が「権力を作る院」であるなら、参議院は「権力を監視する院」としての特色を強く持つべきと思います。
議院内閣制で、議員の中から大臣など政務三役のほとんどが出る以上、議会が政府の強い影響下に置かれることは不可避であり、三権分立が十分に機能しない欠点があります。参議院は政府に政務三役を出すことなく、党議拘束を緩めることなどによって、六年間の任期が保障された見識ある議員たちが、より高い見地から議論を行うなどの改革も本来検討されてしかるべきです。選出方法も権能もほとんど同じ院が二つ存在していても、二院制の妙味は十分に発揮されないものと考えます。
最近、戦前の帝国議会で反軍演説や粛軍演説を行い、衆議院を除名となった斎藤隆夫に強い関心を持っています。昭和15年2月2日の演説の内容は決して軍を貶めるものではなく、むしろ政府と議会の姿勢を糾弾するものだったのですが、同年3月7日衆議院本会議で賛成276、反対7、棄権121の圧倒的多数で除名決議が可決されます。
軍部大臣現役武官制の復活により、内閣は軍部に対して妥協せざるを得ず、議会も沈黙するような雰囲気が横溢していた時代です。そのような中、あらゆる批判を覚悟のうえで正論を述べた斉藤に改めて感動するとともに、除名に反対する議員が僅か7名、自らの立場を曖昧にしたまま責任を果たさなかった議員が121名であったということになんとも言えない思いが致します。
YouTubeや、NHKの「そのとき歴史が動いた」のアーカイブ版で当時の様子は容易に観られますので、是非ともご覧いただきたいと思います。
私が会長を務める「CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー、直交集成板)で地方創生を実現する議員連盟」は、4日月曜日に福島県いわき市と郡山市に現地視察に出向き、6日水曜日には経済同友会前地方創生委員長の隅修三東京海上ホールディングス会長、現委員長の地下誠二日本政策投資銀行常務、市川晃住友林業社長をお招きして勉強会を開き、企業人ならではの簡素で分かりやすいお話をお聞きしました。
詳細は回を改めて論じますが、CLTは地方創生の切り札になるものと信じています。EUとのEPAの行方によってはEUからCLTが大量に輸入されることにもなりかねず、日本国内での需要の拡大とコストの低減による国産CLTの普及は喫緊の課題です。
米朝首脳会談を来週に控え、日米首脳会談が行われました。
「今後『最大限の圧力』という言葉は使わない。なぜならすべてうまくいっているからだ」という言葉がトランプ大統領から発せられましたが、本当に「すべてうまくいっている」のかはわかりません。
北朝鮮はロシアと中国を後ろ盾に「核」をディールの材料として使っているのですが、アメリカファーストのトランプ大統領は国益の多くを異にする日本に対しても巧妙にディールを仕掛けてきているのは明白です。それは首脳同士の親密さとは全く別個のものであり、総理の苦悩は察するに余りあります。
日米間でディールをするためには日本もその材料を持たねば、そもそもディールは成り立ちえません。憲法や日米安全保障体制の見直しの本質は、まさしくそこにこそあると思っています。
週末は、9日土曜日は徳島市で市町村関係者との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル・徳島市万代町)、「衆議院議員 福山守を励ます会」で講演・懇親会・夕食懇談会(午後5時~・同)。
10日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、徳島市自民党関係者との朝食会(午前7時半・徳島市内)、徳島びっくり市21周年記念感謝祭(午前9時・繊維卸団地)、帰京後は都内で講演会と懇談会に出席する予定です。
東京も梅雨入りし、すっきりしない天候が続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生
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