石破 茂 です。
今夕の衆議院本会議において補正予算案が全会派賛成で可決、参議院に送付されました。
これに先立つ予算委員会の審議も緊張感に乏しいまま淡々と進み、政府・与党にとっては幸いなことながら、いささか拍子抜けの感は否めません。
政府側にしてみれば、野党がバラバラで、各党から質問者が多く立って一人当たりの質問時間が短くなり、論点が拡散するほど楽なことはありません。参議院とは異なり衆議院は「往復方式(質疑時間は質問と答弁を合わせた時間)」であるため、長い答弁を行えば、ただでさえ短い質疑時間が終わってしまいます。これは一にかかって野党の責任なのですが、国民の間にフラストレーションや政治全体に対する不信感が高まるのではないかと怖れます。
あまりにも基本的なことを今更申し上げて恐縮なのですが、日本国憲法は憲法改正の原案を内閣が提出することを否定していません。国民に対して発議するのは国会であっても、発議の対象となる憲法改正の原案の提出権は、国会法に定められた衆議院では20人、参議院では10人の賛成議員だけではなく、内閣にも認められているとするのが通説的見解で、憲法第72条の定める内閣が国会に提出する「議案」には憲法改正案も含まれると解されています(清宮四郎「憲法Ⅰ 法律学全集 有斐閣」、佐藤功「憲法(下) ポケット注釈全書 有斐閣」)。
安倍総理は衆議院本会議での稲田議員に対する答弁において「内閣総理大臣として答えるのは差し控えたい」としながらも、「自民党総裁として敢えて申し上げれば」と持論を展開されましたが、内容については語られませんでした。
自民党の憲法改正推進本部の会議においても、様々な質問に答弁する人がおらず(したがって「意見の開陳」ではあって「議論」とはなりえませんでした)、国会においてもその立場に立つ人が居ないままに、何が何だかよくわからないという状態が国民の間でこのまま続くとすれば、決して好ましくはありません。
憲法改正原案を内閣提出とすべきだと主張するつもりはありませんが、憲法改正原案はあくまで国会が提出する、ということを所与のものとしてきたことの妥当性を自らに問い直してみたいと思います。
消費税率の引き上げの議論において、これを可能とする個人所得の増加などの経済環境整備と併せて、社会保障、特に医療と介護の改革をセットで論じなくては意味がありません。軽減税率やポイント制導入の是非よりもこちらの方が事の本質です。
高齢者数がピークとなる2040年前後にはその費用が今の1・7倍にもなると予想される日本の医療を他の先進国と比較してみると、その特徴として人口当たりの病床数が格段に多いことが挙げられます。
人口1000人当たりの日本の病床数は13・4床(2012年)ですが、これはアメリカの4倍以上、スウェーデンの5倍以上と言われています。これに対して病床100床あたりの医師数はスウェーデンの148・7人に対し日本は9分の1の17・1人、ドイツやフランスに比べても3分の1程度、看護職員もスウェーデンの5分の1、ドイツやフランスの約2分の1、平均的な在院日数は3倍から4倍とも言われています。
他方、65歳以上の寝たきり高齢者の比率は、日本を100として、イギリスが30、アメリカとデンマークが20、スウェーデンが10とされています。
人口当たりの病床数が多いこと自体は国民にとって良いことには違いないのですが、そもそも入院を前提とすべき医療のみに限定されるべきではないのか、ということは近年問題とされ、政府の方向性としても急性期とそうでないものとの峻別をすすめようとしてきていますが、適切な医療とはいかにあるべきか、いわゆる「寝たきり」にならなくてもすむ人が寝たきりになってしまってはいないか、結果として医療費や介護費の増加が止まらないという状況になってはいないか。漸進的に改革は行われていますが、国民的議論となっているとは言えません。
私が衆議院の社会労働委員会(今の厚生労働委員会)や自民党の関係部会において社会保障問題に取り組んでいたのは随分と昔のことなので、いささかピントがずれていたり、数字が古かったりするのかもしれませんが、もう一度体系的に学んでみたいと思っております。
韓国最高裁が日本企業に対して元徴用工への賠償を命令する判決を下したことに対し、我が国としては日本の、国際法的に当然の主張を貫いて外交交渉を続けるとともに、これが不調に終わった場合、日韓基本条約と同時に締結された日韓請求権協定(請求権の解釈などを巡って対立した際の規定。外交交渉で解決できなかった場合、一方の政府から要請があった場合に日韓と第三国の委員計三名の仲裁委員会を設置し、両国はその決定に従う)に基づいて解決の道を探るか、国際司法裁判所に提訴するか(韓国側の同意が必要なため困難)、どちらかの道を選択することになります。
韓国最高裁の判決は理解不可能なものですが、朴槿恵政権時代に封印されていた問題が前政権を全面否定する今の文在寅政権になって表面化したということなのでしょう。国内のナショナリズムを制御するのはどの国にとっても難しいことを改めて痛感させられます。
本日は衆議院本会議における補正予算の採決後、札幌まで参ります。
3日土曜日は札幌での講演とパネルディスカッション、帰京後、慶応大学在学中によく通った港区三田の大衆割烹「つるのや」の開店50周年祝賀会に発起人代表として参加します。
在学中、土曜日に法律サークルの自主ゼミが終わった後は必ずここで終電近くまで飲んでいたものです。あの頃は本当に楽しかったな・・・・
4日日曜日は知人の結婚披露宴に出席の予定です。
カレンダーももうあと二枚となってしまいました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生