石破 茂 です。
毎月勤労統計の問題は、この先どうなるのか見通しが立たないのですが、官僚の側に数字をよく見せかけるための偽装や忖度があったとはどうにも考えられません。
そうであるだけに、統計を担当していた厚労省の前政策統括官が予算委員会審議の直前に官房付に異動する、参考人としては呼ばない、あるいは調査を担当した厚労省特別監察委員会の樋口美雄委員長(とても立派な方です)の予算委員会への出席を要請しながら「『労働政策研究・研修機構』の理事長として呼んでいるのであって監察委員長としての答弁は出来ない」とする、などの対応は、形式論理としては正しくても、かえってあらぬ邪推を招きかねないのではないかと危惧します。
様々な事情もあるのでしょうが、疑念が早急に払拭され、本来あるべき充実した審議が行われることを国民は望んでいるはずです。今日の審議から厚労省・前政策統括官を国会に参考人として出席させることで与野党が合意しましたが、当然というべきでしょう。
総理は「平均賃金は下がっていても総雇用者所得は増えており、経済の実態としてはそちらの方がわかりやすい」「実質賃金よりも名目賃金が指標として重要である」と再三強調しておられます。
総雇用者所得とは毎月の現金給与総額に総労働者数を乗じたものですから、雇用者数が増えれば増加します。給与が上がっていなくても雇用が増えているのだから、経済が好調だ、ということは言えるでしょう。失業率が低いのはよいことですし、新たな雇用が創出されたのも事実です。
ですからそれはそれで正しいのですが、国民一人一人の実感としては景気回復と相当の乖離があることも認めなくてはなりません。
「連合の調査によれば」というフレーズも、連合が野党の支持団体であることを踏まえた上で時々発せられていることと思いますが、その組織率は17・4%にしか過ぎず、またその多くは雇用が比較的安定している大企業労働者です。総雇用者所得や平均値、どちらにせよ国民の実感と乖離が生じるのはある意味当然のことであって、大企業、中堅企業、中小企業、零細企業・事業者ごとに名目・実質賃金の推移を明らかにすることが必要ではないでしょうか。
所謂アベノミクスに裨益した層がどこにどれほどおられるのか、裨益していない層はどこにどれほどおられて今後どのようにして対応するのか、労働分配率は大企業と中小企業とでは大きく異なっているのではないか、大都市や大企業の成長の果実がやがて地方や中小企業まで波及するとのトリクルダウン理論を採っているのかそうでないのか(総理は2014年にテレビで「シャンパンタワーのように上のグラスから下へと伝わっていく動きがまさにアベノミクスの考え方なんです」と発言されたはずですが、昨年の総裁選においては「トリクルダウンと言ったことは一度もない」と述べておられました)、等々、今後は事実と正確な数字に基づいた精緻な検証がなされることを期待しています。
戦局が悪化した昭和19年、先帝陛下(昭和天皇)は小磯内閣の米内海軍大臣に対し「日米の戦力比はどのようになっているか」とご下問になり、海相は井上成美次官に回答の作成を命ずるのですが、次官に呼ばれた海軍省軍需局長は「いつものようにメイキングするのですね」と平然と答えたと言われています(「不可視の視点」・保坂正康)が、事実とすれば、なんとも恐ろしいことです。
一昨日の北方領土の日の政府主催の式典の雰囲気は、従来とは微妙に異なっていたと報ぜられています。この件については回を改めて論じますが、「隣国によって一平方メートルの領土を奪われながら放置する国は、その他の領土も奪われ、ついには領土全てを失い、国家として存立することをやめてしまうであろう」というイェーリングの著書「権利のための闘争」の中にある言葉を叩きこまれてきた私には、思うところが多々あります。
18歳未満人口1000人当たり児童虐待相談対応件数の全国比較を見ると、最多の大阪府が8.52件、最小の鳥取県が0.94件で約9倍の開きがあります。あくまで相談対応件数なので、虐待の実態とは乖離があるのでしょうが、地域差の原因を分析してみる意味は大いにあるものと考えます。
最近の日本語の使い方でどうにも気になることが二つあります。
一つ目。最近「本日お伺いして親しくご挨拶するべきところ、やむを得ない用務のため欠席の失礼をお許しください」など、「親しく」という言葉の使い方が間違っているとしか思えないスピーチやメッセージが多いように思います。「親しく」というのは本来、高貴な方が自らなさることを指すときに使うもので、自分が高貴な者であると自認しているのならともかく、このような使い方は明らかに間違っているとしか思えません。
選挙のスピーチでも「今日は私、○○が皆さんのところに親しくご挨拶に参りました」とか、挙句「本日は○○候補のために石破先生が皆さんに親しく応援に来られました」などと言う方がおられて、これで票が減らなければよいが、とその都度内心ひやひやするのですが、さりとて言いづらくて困惑してしまいます。
二つ目。「○○のため、全力を尽くします」というフレーズをよく耳にするのですが、そうあちらこちらに「全力」を尽くせるものではなく、「精一杯の努力を致します」と言う方が正しいと思います。細かいことに拘り過ぎなのかもしれませんが…。
週末9日土曜日は千葉県、10日日曜日は自民党定期党大会に出席の後広島県へ、11日建国記念日は埼玉県へ参ります。
また寒気が戻ってきたようです。三連休の方も、休みと関係なくお仕事をなさる方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生
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