八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(H31.5.24)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.908」をご紹介します。
【「時々刻々 No.908」】時代の変わり目に平成の総括を
水不足を心配していたが、田植えが始まった。薫風が田を渡ると、一斉に早苗がなびき、美しい風紋をえがく。そんな中、ぽつんと田んぼ一枚に雑草が茂るのを見ると、耕作放棄地になってしまったのかと、心配になる。農業の担い手不足は深刻だ。
山間の過疎のまちに、薫風を受けて鯉のぼりが泳ぐ。元気な子供がいる証と嬉しく思う。街では鯉のぼりを見ることが珍しくなった。まれにマンションのベランダで、泳ぐ鯉のぼりを見る。子供を思う親の気持ちは何処に住もうが変わりない。
「こどもの日」の新聞に、15歳未満の子供の推計人口が載っていた。「令和元年、1533万人で、昭和57年から38年連続減少。平成元年の2320万人から約30年間で、787万人(34%)減少した」という記事だ。少子化に歯止めがかかっていない。
反面、65歳以上の高齢化率は、平成の30年間で約2・3倍(約3500万人)に増えた。100歳以上は30年間で20倍超の約6万人を超えた。人生100年時代だ。それに伴って、社会保障制度支出(医療、年金、福祉、介護等)が30年間で約2・5倍の115兆円に達している。社会保障費を赤字国債の発行で賄っていることから、国の借金は平成元年の206兆円から30年間で5倍超の1103兆円に膨れあがった。
5月1日から「令和」の時代に入った。気分的に明るい話題であるが、この時代の変わり目に、平成の30年を多角的に総括する必要がある。積もりに積もった垢を洗い流すチャンスである。負の財産の蓄積は明らかに政治の責任であり、令和の時代を背負っていく子供たちに申し訳ないと思う。
令和で気分一新というわけではないと思うが、新紙幣が5年後に刷新される。1万円札は、福沢諭吉から渋沢栄一になり、5千円札は樋口一葉から津田梅子。千円札が野口英世から北里柴三郎になる。実は渋沢栄一のことをよく知らない。書店に行き彼の著書「論語と算盤」を買った。渋沢栄一は約470社の会社設立にかかわり、500以上の慈善事業にもかかわった。「日本資本主義の父」「実業界の父」と呼ばれ、ノーベル平和賞の候補にもなったとのことである。
経済が発展(算盤)し国・国民が豊かになっていかなくてはならないが、利益至上主義に陥ることなく社会的責任を重視すべきという。「不易流行」という言葉がある。時代に合わせて変えるべきは変えていく中で、変えてはならないものはしっかり守れというものだ。この「不易」が彼の言うところの「論語」の精神だと思う。
豊田・みよし市の選挙が終わり、新しい組織と人事が決まった。課題山積だが、新しい令和の時代の市政に果敢に取り組んでほしい。「論語と算盤」も参考になればと思う。
本稿が読者の皆さんに届く時には、田植えも終わり、鯉のぼりも片付いている。鯉のぼりは向かい風を受け、強い風ほど、力強く泳ぐ。今後の政治への風当たりも厳しくなるであろうが、力強く立ち向かいたいものだ。
さざなみの 田んぼで泳ぐ 鯉のぼり
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生
- 投稿タグ
- 八木哲也