石破 茂 です。
党役員、政務調査会、国会の委員会等の人事も概ね終了し、来週10月4日から臨時国会が始まります。政府・与党も野党も真剣勝負です。まともにきちんと噛み合った議論が交わされ、国民が覚醒するような論戦を望みます。
野党時代、政調会長や予算委員会の筆頭理事として、かなり多く予算委員会の質問に立ったように思うのですが、質問前には長くて一週間、少なくとも数日をかけて、質問の構成を組み立てたものでした。鳩山・菅・野田総理や民主党の閣僚の発言をすべて精査し、新聞や雑誌の論説を分析し、関係する文献や論文を国会図書館から取り寄せて、いくつもの質問を作り、こう問えばこのように答えるであろう、と相手の答弁を幾通りか想定し、それに対する更問(さらとい)や更々問を作り、全体を時間内に収めるように取捨選択して組み立てる。こういった作業はとても勉強になったことでした。
これは政府側で答弁する立場である大臣の職にあった時も同様で、質問者の書いた論文や過去の質問を分析し、所属政党の機関紙の論説にも目を通した上で、答弁を予め組み立てる、という努力を至らないながらも懸命に致しておりました。最近は国会論戦に立つ機会もほとんど無くなってしまったのですが、このような気持ちを失いたくないと思っております。
憲法改正について、巷間「改憲シフト」と言われる新体制も決まりました。
未だに気になるのは、第9条第2項を削除するとの案を「石破案」と称する方がおられるようであることです。私が従来から申し上げている改正案は「石破案」という個人的私案などではなく、自民党総務会において正式に党議決定された、れっきとした「自民党案」であって、まずは党内の議論としてこれとの整合性が問われるべきである、ということを述べているものです。
「国の独立を守る組織が『軍』である」
「『軍』とは、外国勢力による我が国主権の侵害を排除する任務を行う組織であり、対外的作用を大原則とし、その行動は国際法や確立した国際慣習に従うべきものである」
「『軍』は国内で最も大きな実力組織であるがゆえに、国内でもっとも厳格な規律に服し、かつ国内最高の栄誉が与えられなくてはならない」
「『軍』は本来、三権以前の自然的権利である自衛権を体現する。よって、国内法執行組織である行政と同一ではない。ゆえに「文民統制」と言われる、国民主権に依拠した司法・立法・行政による厳格な統制に服さなければならない」
これが国際的な常識であり、国際社会においては至極当然のことなのです。我が国の憲法はこの国際的な原則をまったく無視して作られています。「自民党案」が提起しているのは、すでに我が国に定着している「自衛隊」のあり方を、このような国際的な原則に合致できるように改正しよう、ということなのです。
我々は、少なくともこの基本的な方向性について、広く国会や国民に理解して頂くべく最大限の努力を行うべきであり、そのような誠意ある姿勢こそが国民的な改憲の機運につながるはずだと信じています。「どうせ解るはずがない」と国民を信じないような政治が、国民から信頼されるはずがありません。
「軍」と言う言葉に忌避感があるのなら、「自衛隊」のままでも構わないのですし、それは本質論ではありません。
もちろん、理想がそのまま実現することは世の中においてあまりないことでしょう。しかし我々がそれに近づく努力を放棄してはならないのです。
我々が本質論から説き起こせば、根強くある「憲法改正は戦前回帰への総仕上げ」的なご意見にも正面から向き合い、いかにそんな話と憲法改正が無関係か、を誠心誠意ご説明することにつながるはずです。
日米貿易交渉に一定の決着がつきました。交渉ですから一方のみが利益を得るようなことは決してなく、そのバランスをとるために担当者、関係各位は多大の苦労をされたことと思います。「ウィン・ウィン」であればこれに越したことはなく、目出度い限りですが、自動車・同部品の関税撤廃など残された課題について、これからの交渉も相当な困難が予想されることでしょう。
貿易交渉とは直接の関係はない、とされる米国産トウモロコシの輸入についても、別途、倉庫費用などについて整合性のある措置が必要となります。国内のトウモロコシに病害虫が発生している現状、どのくらいの不足が危惧されているか、民間の判断とはいえ政府もきちんとした説明をしなくてはなりません。
ところで、以前ご紹介した故・小室直樹博士の「韓国の悲劇」(カッパビジネス・昭和60年)はネット通販上の中古価格が上がってきているそうです。ぜひとも解説を付けて復刊して頂きたいと切に願っているのですが、今のところ様々な事情から困難とのことで、とても残念です。
週末は、本日夕刻に鹿児島市内の2会場で講演に伺います。
29日土曜日は第30回自民党ひょうご次世代育成塾で講演、自民党兵庫県連学生部「若手議員と語る会」で懇談(午後1時半・神戸市内)、兵庫県地方議員有志との懇親会(午後6時・同)、という日程です。
早いもので来週からはもう10月です。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生
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