八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(R2.6.26)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.961」をご紹介します。

【「時々刻々 No.961」】緊急事態下の政治どうあるべき

新型コロナウイルスの感染拡大を気にしている間に、いつしか季節は衣替えの時期になっていた。今春は桜、桃、藤などを楽しむ地元イベントが全て中止になり、私も愛でることができず残念だった。

環境省内の自室から見下ろす日比谷公園の緑も深みを増してきた。今年の夏も暑くなりそうだ。コロナ禍に加え熱中症も心配になる。近年、熱中症による死亡者数や救急搬送者数は増加傾向にある。昨年、熱中症で搬送された人は7万人強、亡くなった方は126人にのぼる。環境省は気象庁と連携し、7月から熱中症警戒アラートを試行的に発信する。

通常国会は6月17日に閉会した。新型コロナ対策ばかり考えてきた異例ずくめの国会だった。第1次、2次と2回も補正予算を組み、総額57・6兆円は例年の国家予算の50%強の規模だ。まずは医療崩壊を防ぐ。同時に何とかして治療薬、ワクチンの開発をなし遂げなければならない。緊急事態宣言で経済は停滞し、学校休校の影響も計り知れない。

個人や企業の救済を急いだ。だがマスクも給付金も、持続化補助金などの手続きも遅い。「緊急事態なのに緊急性に欠く」との叱責を度々受けた。

緊急事態下の政治はどうあるべきか。未知のウイルスを「正しく恐れる」ことをもっと深く考えるべきだった。「正しく」と「恐れる」はイコールでなければならない。だがウイルスの実態が不明なため「正しく」が科学的、疫学的に十分把握できなかった。現象ばかり発信され「恐れる」が増幅された。「正しく」を「恐れる」が上回ったのは明らかに政治の失点だ。

新型コロナへの対応では自治体間にバラツキがあった。岩手県はいまだに感染者数はゼロだ。緊急事態宣言前に官邸と各知事のウェブ会議があった。知事側がこぞって全国一律の宣言を求めたことに私は強い違和感を覚えた。「私の県は、対策が行き届いているから、独自に対応したい。対応できない時に政府の応援をお願いしたい」と話す知事がなぜいなかったのか。

緊急事態では首長のリーダーシップは不可欠だが、地方自治は地方議会と首長の二元代表制だ。インタビューを受ける首長の発言に、「専門家の意見を聞き」という言葉は出るが「議会の意見を聞く」とは誰も言わない。違和感を持った。

「正しく恐れる」事と地方自治への対応についての課題の深堀りを至急行い、同じ轍を踏まないよう、コロナ第2波に備えるべきだ。

さて、今国会で記憶に留めたい法律がある。改正大気汚染防止法だ。建築物等の解体工事の際の石綿の飛散を防止するため、すべての石綿含有建材に規制を広げる内容だ。

私は大学卒業後、A石綿工業(株)に就職した。1年9ケ月の間、石綿建材の製造現場で技術者として働いた。これまでひそかに忸怩じたる思いを持ち続けていた。環境委員会で答弁に立ち、法案を成立させることができた。小さくても確かにあった胸のつかえがとれた気がする。環境大臣政務官になったのも、何か因縁めいたものを感じる。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生