八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(R2.8.7)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.967」をご紹介します。

【「時々刻々 No.967」】旅行だけが経済活動ではない

「2番では駄目ですか」。あの迷言を思い出した。6月に開催された国際スーパーコンピューター会議(ISC)で、日本の「富岳」が史上初めて4部門で世界一を獲得した。コロナ禍で沈みがちな気持ちがぱっと明るくなる快挙だ。

自民党のスパーコンピューター推進議員連盟(スパコン議連)の会議で「富岳」について説明を受けた。興味をひいたのは、現在世界で使用されている2128種の医薬品から、新型コロナウイルスのタンパク質に作用する治療薬候補を富岳で探る活動。ある国産市販薬が最有力だったという。臨床研究、治験が実施されていないため、薬剤名は伏せていた。承認されれば日本初の新型コロナ治療薬になる可能性がある。大いに期待したい。

7月に入って全国で新規感染者が急増している。豊田市では7月以前は9人だったが7月31 日現在で75人に急上昇した。感染対策には徹底的な感染経路の調査が重要だ。もちろんプライバシーには配慮しなければならないが、人命にも関わる今回の場合は今まで以上に「公」に配慮すべきだ。

もう一つ、さらなる感染拡大の防止には全力でPCR検査を実施しなければならない。自己防衛をするのは当然だが、みんなが正しく恐れていることに配慮するべきだろう。

7月以降の1日あたりの新規感染者数は緊急事態宣言を出した4月よりも多いことが目立つ。にもかかわらず政府は経済活動を優先してGo To キャンペーンを打ち出した。二転三転した政策に対する批判は小生にも届いている。

旅行だけが経済活動ではないはずだ。豊田・みよし市はものづくりのまちだ。こうした企業がしっかりと雇用を続け、生産基盤を維持することも明らかに経済活動だ。ものづくりのまちを見続けてきた小生にとっては、若干の歯がゆさも感じてしまう。

久し振りに地元に帰ると「この秋に衆議院の解散はあるのか」とよく聞かれる。私はあり得ないと思う。いまの状況で果たして解散の大義があるのだろうか。「大義は後で作れば、いくらでもできる」というのが永田町の論理。実際にこう話す議員もいるが、国民に対して失礼だ。皆がコロナ禍で正しく恐れるなかで政治は何のために選挙をするのか。

解散をするならコロナの収束が大前提だ。ワクチン、治療薬にメドが立ち、東京五輪・パラリンピックの開催見通しが立つ。経済が明らかに上向く。参院選の広島での選挙違反問題に納得できる決着がつく――。いくつものハードルを越えれば初めて「コロナ後の新しい日本を創る」という解散の大義名分になるだろう。とはいえ残念ながら小生の予測は当たったことがない。

コロナ禍で日本の課題もたくさん見えてきた。コロナ後を見据えた新しい日本についての会議も党内で複数開かれている。1〜2カ月後には提言を出す。しっかり議論したい。

7月は雨続きだった。高橋から見る矢作川は濁ったままだ。7月1日に鮎釣りが解禁されたが、まだ釣り人を見ていない。矢作川のいつもの風景を見たい。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生